岳見の家

JID AWARD 2025 入選
 
本計画は、都市の中にありながら閑静な環境を保つ風致地区に位置する住宅である。敷地は西側に向かって大きな高低差、隣地との間には最大約7mの段差が生じており、建ぺい率30%、高さ制限、がけ条例、宅地造成、緑化率といった厳しい法的条件を満たす必要があった。こうした制約の中で、いかに快適かつ豊かな居住空間を確保するかが、本計画の主要な設計テーマとなっている。
敷地前面の道路は緩やかにカーブを描きながら高所から低所へと続いており、建物に向かって車が降りてくるような構成となっている。これに呼応するように、建物のファサードは穏やかな曲線を描き、周囲の風景に自然に溶け込む柔らかな表情を持たせた。
敷地の構成としては、前面道路は敷地に対して北東側に面し、奥に行くほど地盤が高くなる。一般的には使いづらいとされる地形を、本計画では積極的に活かし、敷地の奥を動線空間として計画した。前面道路から進み、地下階にあたる奥まった位置に玄関を設けることで、アクセス動線を敷地の最奥に集約した。玄関へと導かれるこのプロセスが空間に奥行きと物語性を与え、同時に建物全体の縦動線を明確に整理する構成となっている。
こうして手前側を居住空間としたことで、日照条件に恵まれた位置に主要な生活空間を確保し、あわせて風致地区という地域特性を踏まえ、積極的に植栽を施すことで、光と風の行き渡る開放的な空間とともに、季節の移ろいを感じられる住環境を実現している。
施主はキッチンを中心としてお客様をお迎えすることが多いとのことから、一般的にリビングに設けられることの多い吹き抜けを、あえてキッチンに採用。天井まで伸びる天然素材の壁面と相まって、キッチンを舞台のような象徴的な空間とし、上部から注ぐ自然光により、ダイナミックで明るく、印象的な場を創出している。
キッチンを中心に、リビング、テラス、庭へと連続する空間構成とし、さらにテラスの先に大きな塀と壁を設けることで、内と外が緩やかに繋がりながらも、視覚的にはその壁までが室内の延長として感じられるよう計画した。また、中庭を囲むように居室を配置することで、どの部屋からも庭を介した視線の抜けと心理的な繋がりを生み出している。こうした構成は、空間に奥行きと広がり、さらには居心地の良さをもたらしている。
一方で、地下階には水盤を備え、静けさと落ち着きを重視したシックな居室を設けている。地下という特性を活かし、日常の喧騒から離れた、瞑想的なひとときを過ごすのにふさわしい場となっている。
複雑な敷地条件や厳しい法的規制のもとでありながら、地下空間の積極的な活用と、光・風・緑の連続性に配慮した立体的な空間構成によって、静と動の対比を感じられる豊かで多層的な住まいを実現している。

Completion date 2024.12
Principal use Residence
Total floor area 308.36㎡
Location Aichi,nagoya
Structure RC structure
Structure design MOV structual design
Photo Tololostudio
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