川名山の家
名古屋の中心地から東へ12㎞、起伏の多い文教地区にある。敷地内高低差6m、前面道路沿いにおいても高低差3mという傾斜地に建てられた。
クライアントは起業家でありアーティスト、奥様はフラメンコダンサーとして活躍する関係上、毎日多くの来客がある。共に長年スペインを拠点に生活していた。
パブリック性のあるスタジオとアトリエ、プライベート性のある住居、それらをつなぐサンルームで構成されている。どちらの棟も土留めの意味も含め、地中にコンクリートの構造体を埋め、その上に鉄骨の箱を乗せた。
正面に見える印象的なドアノックのついた大きな扉がスタジオへの入口だ。中へ入るとフラメンコの生まれたスペインを彷彿とさせる。螺旋階段を下りると踊りを創作するに相応しい凛としたスタジオがある。ひとたび情熱的な踊りが始まればスタジオ中に広がる音楽と靴音。地下に配したのには外部への遮音性も考えてのことである。
逆に光に促されるように螺旋階段を上ると、Rの天井を持つ広々とした明るいアトリエがある。このRの天井というのは、室内にボリュームを持たせるとともに、住居棟へ影を落とさないための工夫である。
アトリエ階から住居棟へつながる渡りはサンルームとなっている。下には一階の庭が見え、遠くには街を垣間見ることができる。建具を開け放せば、心地よい風も相まって特別な浮遊感を味わえる。
サンルームを通って住まい棟へ入ると、そこはリビングフロアである。2棟に渡って自由に行き来ができるこのフロアは、家族のみならず来客も含めて生活の大部分をここで過ごしている。
上階には個室とバルコニーがあり、高台から街の様子を望むことができ季節の移ろいを感じ取ることができる。
下階は街の景観が消え去り、静寂でよりプライベート性が強くなる。
住居棟へは階段を利用した長いアプローチの他、高低差なく入る入口もある。そちらのアプローチは茶室へ直接入ることで非日常へ誘う他、お母様への段差の煩わしさを配慮したものである。
傾斜地を生かし、断面のズレを利用することで、機能の違う大きな2棟の建物をつなぎ、また静と動のギャップをうまく空間に生かした作品になったと思う。
Completion date | : | 2010.04 |
Principal use | : | Residence |
Total floor area | : | 167.32㎡ |
Location | : | Aichi,nagoya |
Structure | : | RC+S structure |
Structure design | : | Shin kozo-kikaku |
Photo | : | 株式会社 新構造企画 |