大谷の家
初めて敷地を訪れたときの印象は、海に面した崖。
広さはあるが、大きな岩や鬱蒼と繁る木々、そして以前の所有者が作った海へと続く階段が印象的だった。わずかに平らな場所が上下に二ヶ所確認できたことから、この限られた地形に二棟を計画することにした。上段は約10メートル角、下段は約6メートル角の平地である。
地形を大きく変えず、もともとの起伏を極力地盤として活かすことで、風景を守りながらコストを抑える設計とした。上段の一部は土砂災害特別警戒区域に指定されており、その制約も踏まえて慎重に配置を検討している。
敷地内の岩は外に持ち出さず敷地内で再配置し、外階段さえも活かすように建物を計画した。約2メートル張り出した庇が、二棟を緩やかにつなぎ、各所で異なる海の表情を切り取る。風景を壊さず、まるで以前からそこにあったかのような佇まいを目指した。
平地の上段にはリビングを中心としたパブリックスペースを、下段にはプライベートスペースとゲストルーム、ホビールームをまとめた二階建てを配置。それぞれをブリッジとバルコニーでつないでいる。
玄関を開けると、正面にはリビング越しに海が広がり、さらに下へ降りる階段と椰子の木が視線を導く。リビングに入ると、二方向の開口からどこまでも続く海を感じられる。天井の登り梁は、バルコニーへと続く2メートル張り出した軒まで連なり、空間にさらなる広がりを与える。梁やトップライトから取り込む自然光が、時間とともに室内に変化をもたらす。内外の床タイルは同じ素材で仕上げ、空間の連続性を高めている。
部屋全体を見渡すことのできるキッチンは海に向かって配置し、日常の動作の中でも常に海を立体的に感じられる。
二棟の角度をわずかにずらすことで視界が開け、海へと続くような抜けを生んでいる。その間を渡るブリッジは、パブリックとプライベートを行き来するための動線であり、日常の中でオンとオフを切り替えるスイッチのような役割を果たす。
どの部屋からも海を望むことができるが、その表情は部屋ごとに異なる。それぞれの場所に合わせて見せたい風景を切り取り、移ろう海を日々のアートとして楽しめるようにした。
施主は海が大好きで、この土地を見つけるまでに2年をかけたという。
与えられた敷地と制約の中で、自然とともに暮らすためのかたちを探った。この家が、海と地形と人の関係を静かに映す場所になればと思う。
| Completion date | : | 2024 |
| Principal use | : | Residence |
| Total floor area | : | 176.82㎡ |
| Location | : | Aichi,tokoname |
| Structure | : | Timber structure |



























































